線形代数の用語と意味まとめ(主に自分用)
恥ずかしながら,線形代数周りの用語って似たようなものが多くて,すぐにアレがどれだっけと混同してしまいがちになります.線形代数の手計算とかがんばってたのなってもう10年とか昔の話だし,チートシート的にまとめなおしておこうと思いました.内容的には,主に統計や機械学習で使うような内容が中心になっています.
概要
統計・機械学習で使う線形代数は,基本的には以下「計算の簡便化」と「データ変換」の2つがメインです.もちろん数学的に突っ込んでいったり,統計・機械学習でも応用的な手法を用いる場合はその限りではないですが,基本的には下の2つが大きいと思います*1.
個別項目
ノルム
- 意味: ベクトルの大きさのようなもの
- 用例: のとき
- 備考: ↑は2次のノルムで,単に絶対値を加算しただけの1次ノルム,3乗和の3乗根を取った3次ノルムなどいろいろなパターンがある.とはいえ2次ノルム以外は余り使われない*3.
内積
- 意味: ベクトルの要素同士のかけ算
- 用例: のときの
- 備考: 図形的にはからへの正射影を意味するので,とのなす角をとしたときに,とも表せる
一次結合
- 意味: 複数のベクトルを実数倍したものの和
- 用例:
基底
- 意味: 定義空間をベクトルの一次結合で一意に表せる場合に,はの基底という
標準基底
- 意味: 要素の1つだけが1で,それ以外が0のベクトル群で構成された基底
- 用例: 定義空間がのときの
正規直交基底
線形写像
単位行列
- 意味: 対角要素がすべてで,それ以外がすべてである行列
- 用例:
正則
- 意味: が逆行列を持つときは正則であり,持たない場合は正則ではない
線形変換における基底の取替
- 意味: による線形変換において,基底をに取替える場合,と表せる
対角行列
- 意味: 行列の対角要素に0以外の数が,それ以外の要素には0が並ぶ行列のこと
- 備考: 対角行列は累乗がと非常に簡単に求められる,といった計算上の扱いやすさがある
転置行列
- 意味: 行列の列要素と行要素を入れ替えたもの
- 用例: のとき,
正方行列
- 意味: 行要素の数と列要素の数が等しい行列.要するに正方形の行列
- 用例: はの正方行列である
(実)対称行列
直交行列
エルミート行列
ユニタリ行列
正定値行列
三角行列
- 意味: 対角線の左下,または右上がすべてゼロであるような正方行列のこと.左下がゼロの場合は上三角行列,右上がゼロの場合は下三角行列という
- 用例: は上三角行列,は下三角行列
- 備考: 三角行列の行列式は,対角成分の積なので非常に簡便に求められる.下のLU分解は,この正方行列を三角行列に分解することで,計算を簡便化するための手法である
LU分解
- 意味: 正方行列を下三角行列と上三角行列の積に分解すること
- 用例: のとき,
- 備考: 計算しやすくするための対角成分をに揃えるのが慣習となっている.またもも対角成分を1にするかわりに,対角行列を加えてとしたLDU分解の形もある.LU分解を行うことで,もとの正方行列を用いた一次方程式が簡単に解けたり,行列式が簡単に求まったりするようになる
コレスキー分解
- 意味: LU分解の特殊な場合で,正定値エルミート行列を下三角行列とその随伴行列に分解すること
- 用例:
参考
上記のまとめを書くのに使ったのは,主に下記の2冊です.どちらもいわゆる教科書というよりは,線形代数がどう使われるか,何の役に立つのかということを説明している良書です.順番は「意味がわかる線形代数」→「プログラミングのための線形代数」で,前者はいわゆる文系出身で数学忘れました,な人でも理解できるような形で丁寧に書かれている良書です.後者はプログラマ向けで,実装コードや処理の高速化といった面に結構ページを割いています.
まずはこの一冊から 意味がわかる線形代数 (BERET SCIENCE)
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