データ分析から戦略を考える立場になりつつある状況で役に立ちそうな本3+1冊
ということで,職域の変化に伴い,技術書以外の本を読む機会が増えてきている今日この頃です.大学にいた頃は割といろいろ読んでたんですが,ソフトウェア / データマイニングエンジニアのようなことをしていると,専門分野でも覚えることが多いので,なかなかそちらまで手が回らなかったりします.
ということで,最近読んだ本で,読んでよかった本について備忘録がてらレビューしておきたいと思います.
データサイエンティストに学ぶ分析術

データ・サイエンティストに学ぶ「分析力」 ビッグデータからビジネス・チャンスをつかむ
- 作者: ディミトリ・マークス,ポール・ブラウン,馬渕邦美,小林啓倫
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2013/02/28
- メディア: 単行本
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著者は広告会社のマーケティング部門のベテラン分析者で,なんらかの施策なり成果なりを達成するために,どのようにデータ分析を行っていくかということが,順序立てて説明されておりわかりやすいです.
原題の「sexy little numbers」でもわかるように,著者はいわゆるマーケティング畑の人で,調査データの分析屋さんなわけです.が,ビッグデータとかいわれている原題においても,小規模サンプルデータでできることわかることは山のようにあります.というよりも,大規模データの機械学習くらいしかまともにビッグデータをいかせる分野はないし,応用先も異常値検出や大規模アイテムのレコメンドなど,やはり限られているのが現状だと思います.
そんな中で,いかに実質的に意味のある知見をデータから引き出すか,という点においてこの本は示唆深いものを含んでいるように思います.まぁ自分自身がビッグデータ界隈で飯を食っている身なので,そんな偉そうなことはいえないですが...
良い戦略,悪い戦略

- 作者: リチャード・P・ルメルト,村井章子
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2012/06/23
- メディア: 単行本
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こちらの本は,個別の商品なりサービスの話ではなく,もっともっと大きな部門 / サービス,もしくは会社全体の戦略を考えるときに,どのような枠組みで考えるべきか,という点について非常に明快に書かれており,かつ考える枠組みを与えてくれます.
少なくとも,算出根拠のよくわからない数値目標をたてて,それを達成するために手段を選ばない,のようなことは全く戦略とはいえない,ということがよくわかります.実際のところ,いろんな会社でよく見られる光景ではあると思いますが...
この本で書かれているのは非常にシンプルで,会社が抱えている課題の中で,最も重要なものにフォーカスせよ(=それ以外は切り捨てろ)という点にあります.わかっていても,あれもこれもとなりがちな中で,基本に立ち返って,そもそも何が一番重要なのかを考えるのは大事ですね.
データ分析をやる中でも,とりあえず取得可能だからあれもこれも取っておいて,またとりあえずあの変数もこの変数も突っ込んでいろいろみてみよう,といったことは割と良くある事態ですが,これについても,仮説ベースで一番大事なところから攻めていく姿勢がないと,時間ばっかり食って成果が出ないみたいな残念な状況になりがちなわけですね.
なぜあの会社はもうかるのか? ビジネスモデル編

- 作者: 山田英夫
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2012/07/24
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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商品やサービスについて施策を考える際には,そもそもどうやって継続的に儲けるか(=ビジネスモデル)ということを考えながら試行錯誤を繰り返す必要があります.でないと,実はビジネスモデル的にとっくに崩壊しつつあるサービスについて,むりやり販促費をかけながら見かけの売り上げを確保する,といった阿呆なことをやるはめになったりします.
この本では,様々な会社の様々なビジネスモデルを事例ベースで紹介し,それを分類してまとめています.また,本のコンセプトが,どこかの会社のビジネスモデルを異業種へ適用していくためにはどうしたらいいか,という点にあるので,自社の業態に適用可能なビジネスモデルはないか,またどう改善していけば既存の優れたモデルに近づけられるか,といった読み方ができると思います.
なぜこの店で買ってしまうのかーショッピングの科学

- 作者: パコアンダーヒル,鈴木主税
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2001/02/22
- メディア: 単行本
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最後に,データ分析というよりはもっと質的な調査,いわゆるエスノメソドロジー的な手法に基づいて小売業の店舗設計について述べているこの本について紹介しておきます.上記3冊と比べるとぐっと古いし,データ分析には直接は関係しない本です.
ですが,何かを改善していくときに,量的なデータ分析だけではなく,いかにこういった質的かつ泥臭いプロセスが役に立つか,また仮説ベースの思考法とはどういったものかという点について説得力を持って述べられています.それがデータを眺めるか,リアルの現場を眺めるかの違いだけであって,そこに洞察力や仮説力が必要なことはいうまでもありません.
最近のデータサイエンティスト的な議論の中では,統計学やら機械学習の最先端手法がわかっていればOK的な物言いがされることが多いですが,実際のところそれらをふまえた上で,どれだけ意味のあるインサイトにつなげられるかが一番大事な点なわけです.この点について,本書は非常に学ぶべきところの多い本だと思っています.まぁ題名と装丁がダサすぎるのが難点ですが...